日本のロック/ポップ・アルバム 至高の40枚

編集後記

ということで、書いてみましたが、やっぱり書き始めてから2ヶ月あまり。まあ、しょうがないでしょう。本当はもっと評論っぽくしたかったんだけど、地力がないから、かなり無駄に長く中身のないものになってしまったな、という気がします。それに書く際にデータ的な資料としてアマゾンのレビューは見たんだけど、上手く書く人はいるもんだな、というのもよくわかったし。そりゃあそうだ。初めの決め事でちゃんと書けたのはジュディマリくらいかな。で、ランキングにしてみて改めてわかったのは、自分の1st好き。上位4枚は全て1stだし、成熟よりも鮮やかさを自分はつい選ぶ傾向にあるようですね。

 こういうランキング付けというのは、多分に自己満足的なものではあるのは確かなんだけど、自分が信頼できる人がつけたものというのは気になるもので。僕のものも、へえ、このアルバムはいいのか、聴いてみるか、と思ってくれれば、それ以上のことはないのです。ちなみに、スヌーザーでのランキングでやたらと評価の高かったRCサクセションは何枚か買ったんだけど、2nd『楽しい夕べに』は確かに素晴らしいアルバムで、騙されたと思って買ってみてよかったものでした。

では最後に、今選ぶならこんな順位、というのを書いて終わりにします。ではでは。

40位 『point』  by  cornelius

39位 『アンテナ』  by  くるり

38位 『スリーアウトチェンジ』  by  スーパーカー

37位 『断絶』  by  井上陽水

36位 『For Beautiful Human Life』  by  キリンジ

35位 『泰安洋行』  by  細野晴臣

34位 『無罪モラトリアム』  by  椎名林檎

33位 『未完成』  by  bloodthirsty butchers

32位 『Solid State Surviver』  by  yellow magic orchestra

31位 『29』  by  奥田民生

30位 『東京』  by  サニーデイ・サービス

29位 『over』  by  オフコース

28位 『こども』  by  空気公団

27位 『LIVE』  by  ブランキー・ジェット・シティ

26位 『キャベツ』  by  たま

25位 『図鑑』  by  くるり

24位 『BGM』  by  YMO

23位 『ZAZEN BOYS』  by  ZAZEN BOYS

22位 『ココロに花を』  by  エレファントカシマシ

21位 『SAPPUKEI』  by  NUMBER GIRL

20位 『STICK OUT』  by  THE BLUE HEARTS

19位 『jp』  by  クラムボン

18位 『満足できるかな』  by  遠藤賢司

17位 『VOXXX』  by  電気グルーヴ

16位 『HAPPY END』  by  はっぴいえんど

15位 『音タイム』  by  ハナレグミ

14位 『TRIPLE BARRELL』  by  Tokyo No.1 Soul Set

13位 『HOSONO HOUSE』  by  細野晴臣

12位 『FAIL BOX』  by  奥田民生

11位 『School girl bye bye』  by  NUMBER GIRL

10位 『金字塔』  by  中村一義

9位 『HIGH TIME』  by  THEE MICHELLE GUN ELEPHANT

8位 『Songs』  by  シュガーベイブ

7位 『ペーパードライヴァーズミュージック』  by  キリンジ

6位 『MUGEN』  by  サニーデイ・サービス

5位 『風街ろまん』  by  はっぴいえんど

4位 『大瀧詠一』  by  大瀧詠一

3位 『ひこうき雲』  by  荒井由実

2位 『犬は吠えるがキャラバンは進む』  by  小沢健二

1位 『THE BLUE HEARTS』  by  THE BLUE HEARTS

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『犬は吠えるがキャラバンは進む』 by 小沢健二

1位

dogs

Ozawa_inu

’93年作品。

結局これかい、というオチなわけで。今回のセレクションでベスト3はすぐに決まったのだけど、その3枚の中ではこれが一番突っ込みどころが多い作品かな。というのも、エッジのまるでない演奏、調子っぱずれなボーカル、これをけなすのは簡単な気もするからだ。じゃあ、何でこれを1位にしたのかというと、自分が今まで聴いた音楽とかを代表するアルバムを1位にするなら、これが無難かな、と思ったから。そんなような不思議な説明をついしてしまう。つまるところ、これは大愛聴盤というわけよ。

 アーティストの意向により、この作品は後にジャケットも変更されて『dogs』という至ってシンプルなタイトルでリリースし直されているのだけど、こちらには本人のセルフライナーが載っていないそうだ。このライナー、大変に素晴らしいものなので、是非ともこちらのアルバムを探して購入されることをお勧めしたい。まあ、試聴しなくても買って損ないと思えるものだし。だって、どの曲も本当にいいから。これ以上書いてもくどくなるだけなんで、ここではこのくらいで終わり。

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『ひこうき雲』  by  荒井由実

2位

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Araiyumi_hikoki

’73年作品

’70年代に隆盛を極めた、所謂”ニューミュージック”の元祖であり、永久不滅の決定的名盤。キャラメル・ママ(後のティンパンアレー)の演奏の最高傑作と言っても構わないだろうし、シンガーソングライターアルバムの最高峰と言ってもいいだろう。一昨年くらいだったかに放送されていた情熱大陸の中で、ユーミンは、自分のことを昔は天才だと思っていたのだけど今はそうは思っていない、という風な内容の件があったのだけど、確かにこの作品に関しては、”天才”という言葉がぴったりくる。僕は、本人の努力が見えにくくなってしまうような気がするので”天才”という言葉を使うことは好きではないのだけど、ここではそういう他ない。ブックレットを開くと載っている”誕生日”という詩から始まって、全ての音と言葉が完璧なまでに鮮やかな色彩で描かれていて、それでいて淡い空気を包んでいる。個人的な出来事を書いているのに、どこまでも抽象的で普遍的だ。ケチをつけてみるとしたら、”恋のスーパーパラシューター”はちょっとオーバー過ぎて浮いている気がするかな(笑)、というくらい。まあ、この曲がこのアルバムの中で一つのアクセントになっている、という気もするけど。いやはや、何とも奥が深い作品で、いまだにハッとすることが多い。

 この作品が全編通して素晴らしいのは間違いないのだけど、抜けて輝いているのは、アルバムタイトルにもなっている一曲目。イントロからアウトロの細野晴臣のベース(僕の友人であるミュージシャン、大福氏は、「このアウトロの細野さんのベースで飯何杯でも喰える」とまで言っている)まで、全てが芸術的。そして、2回目のサビの繰り返しのところで、「あの子の命は」というところで非常に情熱たっぷりに歌われた後で、そこで全てを言い終えたかのようにポッと「ひこうき雲」と歌う彼女の歌唱には、いつも心が持っていかれてしまう。それは、音楽の神が降りてきた瞬間と言ってもいいだろう。

そんな素晴らしいユーミン様ですが、近年はどうもサーカスに凝っているご様子で。困ったものです。

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『THE BLUE HEARTS』

3位

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Blue_hearts_1st

’87年作品

今決めたら、これが一位。31歳の僕はブルーハーツ世代と言ってもいいくらいで、ブルーハーツは絶対的で熱狂的な支持を当時はされていたのだけど(今もかな?)、彼らの音楽をちゃんと聴くようになったのは、実は一昨年から。それまでは、曲は大抵知っているんだけどアルバムを聴くなら『STICK OUT』かな、という程度でした(恥)。けど、一昨年ブルーハーツのアルバムを全部職場の友人から借りて聴いたときの衝撃ったらなかった。特に、抜けてこの1st。もう、とにかく夢中になってしまった。もうある程度いろんな音楽を聴いているせいで、これはいいと思って繰り返し聴くことは今でもちょいちょいあるんだけど、その音楽にすっかり恋してしまうことなんてそうはない。その時、そりゃあ熱狂的に支持されるわけだ、と今更ながらに知ったのである。

彼らの音楽はパンク・ロックと一般的に言われているのだけど、それは2nd以降に当たる言葉で、この1stなんかは”パブ・ロック”という言葉の方が適切なんじゃないかな。勿論そこでのジャンル分けが大事なわけじゃないんだけど、スターリンだったり、日本に脈々とあったパンクシーンとは随分距離があるし、後から出てきたパブ・ロックの雄、ミッシェル・ガン・エレファントから見たら親に当たる存在なんじゃないかな、と僕は聴いてて思ってしまうんだよね。まあ、どうでもいいか(笑)。聴けばわかるでしょ、というくらいの格好良さだ。

 初期のブルーハーツは、その楽曲の素晴らしさもさることながら、歌詞も魅力の一つ。むしろ、この歌詞こそが魅力と言っても、それは間違いじゃないと思う。ボブ・ディランがノーベル文学賞にノミネートするかもしれない、というニュースが流れたことが昔あったのだけど、それなら彼らもノミネートしてもいいんじゃないか、と思ったくらいだ(僕はボブ・ディランを心底敬愛しているし、彼のことを軽く見るつもりではないです、悪しからず)。”未来は僕等の手の中”の、なんと美しいことか。下らないやりとりを強要してしまうような社会でのやり取りを味わうと真実は全く持って見えなくなってしまうんだけど、これだけ高い理想が頭のどっかにあれば、僕らは人にやさしくなれるし、自分達が努力するということを大切に思えるだろう。そう、これほど乱暴なまでに人の温もり、心をセレブレイトできる音楽を、僕は他に知らない。ちょっと大げさに書くとそんなことかな、と思う。

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『SCHOOL GIRL BYE BYE』 by number girl

4位

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Numbergirl_school

’97年作品

福岡市博多区出身の伝説的なバンドがセンチメンタル過剰な福岡時代に作りあげた、インディーズ盤。僕は、彼らのメジャーでの2ndアルバム『SAPPUKEI』を、

僕が日本で一番敬愛するバンドの最高傑作。

と紹介しているのだけど、自分の好みでつけてしまうとこっちの方がどうしても上。無理やりフレイミング・リップスのアルバムに例えるなら、他人に奨めるアルバムとしては『Soft Bulletin』なんだけど、自分が好きな作品を挙げるなら絶対『Clouds taste metallic』と言ってしまう感覚に近い。まあ、自分にしか分からない例えだな(笑)。また、まだこの頃は自分たちだけで録音していたため、音質はさすがに悪いというのが一般的な意見で、確かにタムの音割れはかなりまともじゃないし、二本のギターもクリアに出ているとは言えない。しかし、これはこれで正しい音楽なんじゃないかな、というのが僕の意見だ。ドラムの勢いがとにかく出るような形に録られているし、ここでは中尾憲太郎24才(当時)のルードかつ直線的なベースが充分に堪能できるから。勿論、評論家ではない僕は、この音楽を聴き過ぎて好き過ぎるあまりに最早客観的に述べることができない、というのもそこには正直あるけど(笑)。要するに、思い入れという点だけでいったら、これが1位になってしまうだろう。

ほぼ全てのライヴで演奏されていた”omoide in my head”で始まりを告げるこのアルバムは、彼らのアルバムの中では一番メロディアスで、かなり方向性は違うと言ってもいいくらい。多分この頃の曲は、演奏を全部入れてから歌詞をパッと考えて唄を乗せていく、という後期~ZAZEN BOYS時代でとっている手法はとっておらず、普通に作っていたんだろう。そのためか、今の作風と比べると、語彙だって驚くほど豊富に感じる(笑)。まだ冷凍都市東京に出てくる前だからか、普通に友達と連れ立って飲み屋を渡り歩き朝まで過ごす、なんて青春絵図が普通に出てくるのも、このアルバムの特徴と言ってもいいかな。いずれにしても、ナンバーガール=鋭い演奏、格好いい、というイメージで聴くよりも、フリッパーズとオルタナティヴの合いの子として聴いたほうが適切かもしれない。ロックというよりポップス。ギターロックはどうも聴く気にならない、という人にはさすがにお勧めできないけれども、この音質の悪さに反して、間口は広い音楽だと思う。

ストロークスの登場から始まった、所謂ガレージロックリバイバル(今振り返ると、これはただの無理やりな造語で、ちっともガレージロックじゃないバンドが結構多かった気がするけど)が盛り上がったとき、ミッシェルガンエレファントはロンドンに、ナンバーガールはアメリカに拠点を置いて活動するべきだ、とそれこそ凱旋門賞で多くの競馬ファンがディープインパクトにかけたものと同じような期待を僕は抱いてはいたんだけど、結局それは叶わぬ夢になってしまった。そして、僕はその夢をかみ締めるように、今またこのアルバムを聴いている。

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『MUGEN』  by  サニーデイ・サービス

5位

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Sunny_day_mugen

'99年作品

やたらと多作な自分の能力を抑えることなく叩きつけた前作『24時』と、それに伴うロックロックした感じのツアーで、曽我部恵一は気が済んだのかもしれない。そこからしばしの休息の後に紡いだ音楽は、まるでSmall circle of friendsやMilleniumのような、至って穏やかなソフト・ロックだった。これぞ、みんなが求めるサニーデイ・サービスの音楽と言ってもいいかもしれない。当時そんな印象を受けた僕は、そのあまりにも当たり前な音楽に落胆し、サニーデイから一時期離れてしまったくらいだ。まあ、その頃の僕は、要するにただのバカだったんだけど(笑)、このアルバムには確かに原点回帰的な雰囲気が漂っている。ただ、何度も聴いた今だから思うけど、ここまでソフト・ロックに接近したアルバムをこれまで彼らは作っていないんだよね。どちらかというと、基本フォークをやりつつ、隙あらばグレッチを鳴らしてみたい、みたいな感じだったから。そういう意味では、ここでの曽我部恵一もとても野心的だったんだと、何度も聴いた今だからこそ(笑)、思ったりする。

”江ノ島”といい”スローライダー”といい、悪く言ってしまうとなんだか聴いたことがありそうな曲なんだけど、本当に素晴らしいポップスばかりがここには収録されている。後半なんか、とにかく全てが美しい。真新しいことをするのはそれはそれで素晴らしいのだけど、何一つ新しいことをしなくても別にいいのだ、ということを雄弁に語っているようなアルバムである。あとついでに書くと、曽我部恵一の美声を充分に堪能するなら、これがダントツなのでは。次は、5馬身くらい離れて、『愛と笑いの夜』かな。

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『金字塔』  by  中村一義

6位

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'97年作品

中村一義という引きこもりの音楽フリークが絶望の淵から自分の力で作り上げた、正しく文字通りの『金字塔』。自分で全部の演奏をしたことから、当時彼は”和製ベック”とも呼ばれたりしたのだけど、僕はトッド・ラングレンの『Something/Anything?』を初めて聴いた時にはこの作品を思い起こしたので、それなら”和製トッド・ラングレン”といった方が適切だったのではないか、と思う(まあ、そんな呼び名もすぐに、彼のその後の素晴らしい活動の中でどっかへ行ってしまったのだけど)。

彼の演奏は、ビートルズフリークを公言するだけあって、ビートルズの音楽、特に中期の影響が色濃かったりする。ドラムのタムのモタモタした感じなんか、あからさまにリンゴ・スターっぽいしね。あと、それだけじゃなくて多分に'60sな雰囲気はあちらこちらにあるから、例えるならば、これは雑誌『レコードコレクターズ』の中から出てきたみたいである。けど、この作品を単なる懐古的なものにしていないのは、その音楽が”本物”であるのもさることながら、飛びっきりに蒼く、そして誠実な言葉の数々がそこには乗っていたからである。どの曲も、塞ぎこんでいた当時の生活からはかけ離れたポジティヴなものなのだけど、そこで述べられているのは単なる自己愛ではなく、他者への愛にも満ちていて、歌詞だけでも成立するほどの美しい世界感を持っている。それは、”始まりとは”で流れる矛盾する言葉の数々みたいに、全てがごちゃまぜな今の世の中だって自分の気の持ちようなんだ、と言ってくれているようでもある。とまあ、僕が陳腐な才能で書いてみたところで彼の作品とは距離が開くばかり(恥)。そこらへんは、論より証拠ということで。

最後に、彼の声はちょっと変わっているので、聴く気にならないという方へ(特に1stは癖が強いかな?)。そこは我慢して何回か聴いて、味だと思うようにしましょう。そんな理由でこの作品から遠ざかってしまうのは、あまりにも勿体無いと僕なんかは思ってしまうので。

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『VOXXX』  by  電気グルーヴ

7位

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Denki_voxxx

'00年作品

電気グルーヴは、作品を追うほどに音のクオリティを目覚しく向上させ、相変わらず全くもってバカバカしい言葉の数々を魔術的に操りつつも、それを結局は一大スペクタルに仕立て上げる術を身につけてしまった。石野卓球の音楽に対する向上心は、本人の極めていいかげんでニヒルな言動のせいで全く隠れてしまうけど、多分相当なものだろう。けどこの大傑作は、そこから滲み出る得体の知れない気味悪さもあり、さすがにメインストリームを突き抜けることはなく、彼らは結局翌年、『THE LAST SUPPER』というこれまた非常に素晴らしいセルフトリビュートアルバムを発表した後、遂に活動を休止してしまった。本人達がそれを健全な結果だと受け止めたのかどうかはわからないのだけど、本当は内心かなり不本意だったんじゃないだろうか、と僕はこの作品の偉大さを前に勝手な妄想をしてしまう。まあ、多分に勝手だけど(笑)。

閑話休題。このアルバムは、70分を超える非常に長いアルバムなのだけど、ついつい通して聴いてしまうほど、構成がよく出来ている。初めの4曲は完璧なほどにポップで優れていて、テンポがいい。けど、そこから後はグッと冗長な展開になる。”インベーダーのテーマ”なんてただのネタなのかよくわからないし、いらん件のような気もする。けれど、テクノミュージックとは相当遠い地点で狂気が炸裂する”エジソン電”を経た後に徐々に訪れる平穏、そして”レアクティオーン”で「東京の若者の全てが、ここに集まっています」という言葉が流れた時には、それは全て意味があるものになってしまう。つまるところこのアルバムは、厭世的な自分たちにとっての”素晴らしい生活”というのを非常に分かりやすくリプレゼントしてくれたものなのである。そう、これは僕らにとっての”世界で一つだけの花”なわけよ、と書いてみたりして。本当かね(笑)?

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『図鑑』  by  くるり

8位

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'00年作品

くるりが残した、決定的に素晴らしい傑作2nd。佐久間正英という偉大なるプロデューサーの元でとても美しく整ったデビューアルバムを制作した彼らが次に選んだのは、混乱だった。とにかくとっちらかったポップセンスの爆発の嵐。妙に懐かしいような感じの曲調の、ベース佐藤の作品も非常によい。勿論、鬼才ジムオルークとのコラボレーションがこの作品には相当効いているはずなのだが、ここまでよいのはやはり本人達のポテンシャルがあってこそ。前作では抑えられていたのか希薄だった、ハードロック(特にクイーン)の影響が色濃く出ているし、ジョンスペなどのオルタナティヴ・ガレージ的なサウンド作りも感じられる。ただ、それはインディーズ時代のミニアルバム『ファンデリア』のような限りなく習作的な仕上がりではなく、完全に自分達のものになっている。それに、”惑星づくり”、”宿はなし”などは、その後のアルバムにつながる、これまでにないアプローチも目をみはる。とまあ、ここまで幅が広い形で出来たアルバムというのは、得てして散漫な印象を与え、アルバム通して聴くのはつらいものだけど、ここでは特に苦もなくこの葛藤の産物を楽しんで味わうことができるのだからたまらない。

どの曲も素晴らしく、正に必聴と言ってもいいのだけど、僕が特に愛してやまない曲は、シングルでもリリースされた”街”という曲。Wikipediaの、この曲の項に、

この曲を出した当時、岸田は「めっちゃ売れる」と思っていた(結果は逆に全作品中最低売り上げ枚数)。

というエピソードが載っているのだけど、僕も確かにそのような話はラジオで聴いた(Oh!My Radioで岸田がこれをかけたときに、この作品が出来たとき80万枚とか売れるんじゃないかと思ったのだけど、蓋を開けたらその50分の1も売れんかった、と話していた記憶がある)。だからその反動でという訳でもないんだろうけど、このアルバム以降にくるりが出したシングルは、ぐっとラジオフレンドリーになった感もあるけど、この当時抱いた岸田が抱いた直感に、僕は激しく同意したいところだ。それこそ、ミスチルの桜井が”Cross Road”を作ったときに、遂に100万枚売れる曲ができたと叫んだ(らしい)、というエピソードみたいな美談になるはずだったんだけどね。

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『HAPPY END』 by はっぴいえんど

9位

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Happy_end_happy_endthumb_2

‘73年作品

確かにはっぴいえんどは、日本語ロックの永遠の金字塔として『風街ろまん』という作品を完成させたグループとは言える。しかし、それでも彼らの他の作品を置き去りにして、はっぴいえんどと言えば、やはり『風街ろまん』だというのは勿体無い。その後の4人の華やかな活動を俯瞰した上でどちらが重要か、という観点でいえばこっちの方がはるかに上では。特に、細野晴臣と大瀧詠一にとってはね。それにも関わらず、このアルバムは、レコード会社のディレクターの企画により制作の機会が持たれた、オリジナルアルバムとしては通常考えられない制作過程を経ている。言い換えれば、これはある意味非常にタームの短い再結成アルバムだ、ということ。それでもこれだけ素晴らしいのだから、彼らは本当に恐るべしミュージシャン集団だという他ない。勿論、それだけヴァン・ダイク・パークスとのレコーディングが楽しかったということもあるだろうけど。ひょっとしたら、始めは4人とも半ば旅行気分だったのかもしれないが、そう、大瀧詠一のインタビューでの発言を引用するならば、彼らは音楽のみで繋がっているのだから、一度集まれば音楽で火が点いてしまうに違いない。

と、とりあえず手を変え品を変え褒めてみたいのだけれど、この作品には賞賛が似合わないのは、この作品の多くが弛緩した空気を含んでいるからか。ヴァン・ダイク・パークスとかなり盛り上がってつくられたと言われている最後の曲なんかは、これは結局の所遊びで作ったまでだとネタばらししているようでもあるし。それでも、あっと言う間に聴き終わって、また聴きたくなってしまう、不思議な名盤である。

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